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羽仁進監督『アンデスの花嫁』(1966.9 東京映画 + 羽仁プロ 東宝配給)は、観るのをスルーしようと思ったが、ついつい録れてしまいチェックすることに。 南米ロケの、観光ドキュメンタリー的な娯楽映画と思っていたが。 確かにそういう部分はあるものの、なかなか深い作品だった。
先夫との男児を抱え、日本で生活苦だったらしい女性(左幸子)。 学生時代に民俗学を専攻し現地の文化に興味があったとか、青年海外協力隊みたいな活動をしていたとか、信心から貧しい人々を救いたいという部分も全く なさそうなタイプ。 ボリビア(チチカカ湖が出てくるのと、紙幣の表記で分かる)はアンデス山中の寒村で、農業指導のような事をしてるという男性のもとへピクチャーブライドし、男児を連れ岩山を越えてくるところから映画はスタート。 農家の嫁どころじゃない、こんな悪条件の再婚を決意した彼女の素性を知りたいもんだが、日本での生活状況はハッキリと語られない。 …ひょっとして正体は、当局にマークされてる元活動家 ⁇
仮面かぶったインカ末裔村民たちの出迎えを受け、当惑する左。 大河ドラマで演じた信長人気も醒めやらぬ頃の高橋幸治がクレジットされているので、再婚相手は高橋と思いきや。 夫を演じるのは現地でスカウトされたらしい、眼鏡で口髭の小男 アンセルモ福田(庵野監督を思わせる風貌)であった。 彼は日本からの移民の子孫だが富裕層ではなく、インカ遺跡を盗掘まがいに見つけ、掘り出した物品を売って地域に還元(最重要なのは井戸掘り資金)するという山師的な男だと分かる。 それでも村民と馴染み、村のため夫のためにと尽くして、新たな子供も もうける左。 夫はついに財宝が眠る遺跡を見つけるが、好事魔多し。発掘中の落盤事故で死亡するのだった。 左は映画中盤、日本人開拓団の独身ハンサム農業青年(これが高橋)に心が動いたり、夫が発掘で留守の間に村の伊達男キスキスにプロポーズされ断っていたようだが。 夫の死後、ラストで再会した高橋は、現地女性の新妻を同伴していた。チャンチャン! …夫の意思を継ぎ ここで生きていこうと、左が祭の灯りを見て思う(たぶんね)ところで終わり。 子供たちが成長し、母と『世界の村で発見!こんなところに日本人』に出演したかどうかは定かでない。
当時、監督・羽仁のパートナー(1959〜77、羽仁が左の妹とデキてしまい破局)だったからこそ出来た、左の献身的演技(現地女性とのキャットファイトも!)とロケーション効果で見せる異色作。 1966年の、キネ旬日本映画ベストテン6位(1位は『白い巨塔』、ちなみに『大魔神』が25位に入る大健闘)。 |
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